Price Discrimination

Handbook of Industrial Organization
Volume 3, 2007
Chapter 34 Price Discrimination and Competition
の中から、2nd Degree Price Discriminationについて。

そもそも、1st degree, 2nd degree, 3rd degreeってなんて訳すのでしょうか。ここでは、第○種価格差別で行こうと思います。
一応念のため

  1. 第一種価格差別:財の売り手が、「買い手が支払ってもいい最大の金額」を完全に把握していて、かつ買い手ごとに異なる価格を提示できる
  2. 第二種価格差別:財の売り手は、買い手の特徴やIdentityによっては異なる価格を提示できないが、財の個数(や品質)と価格の組み合わせを非線形にして提示できる
  3. 第三種価格差別:財の売り手は、買い手のIdentityによって異なる価格を提示することはできないが、買い手の特徴(性別、年齢、地域など)によって異なる価格を提示できる

第一種の例はよくわからないですが一対一の交渉で足元見られる状況でしょうか。第二種の例としては新幹線のグリーン車・普通車とか、お酒の一升瓶・四合瓶、まとめ買い割引とかですかね。第三種の例としては、映画館のチケットとかネットの映像配信の地域制限とか。

まず、第三種価格差別では、財の配分が非効率になりえることが知られています。
たとえば、映画のチケット。
大人1500円、学生1000円だとしましょう。
空席が一つあり、1100円まで払ってもいい学生と、1200円まで払ってもいい大人がいたとしたら、後者にチケットをあげるのが効率的です。一方、実際にはチケットは前者に買われることになるので、財の効率という面だけ見ると第三種価格差別は非効率を生む可能性がある。
もちろん、第三種価格差別が許される状況とそうでない状況を比べてどちらが効率的かという問題は別の問題だ。
独占企業が供給する場合、「第三種価格差別が許される状況の方が社会的に望ましい」only if 「第三種価格差別が許される状況の方が生産量が大きくなる」が成立することが知られている。
映画館の例でいうと、もし学割を禁止したとしても、大人の価格弾力性が十分に小さければ(1400円にしてもあんまり映画に行く人は増えないし、1600円にしてもあんまり映画に行く人が減らない状況)、独占企業にとって利潤を最大化する価格は結局全員に1500円を提示することかもしれなくて、その場合第三種価格差別を禁止しても結局学生(と企業)が損するだけだ。
価格差別を許したときに、財の供給が増える場合にのみ、社会厚生が増加する場合がある。(上の例だと第三種価格差別を許したほうが供給が増えているので、社会厚生が増加している可能性がある。)


一方、第二種価格差別では、企業は価格と数量のメニューを提示するだけで、買い手が自分の好みに合わせて自己選択するような状況を考える。なんか色々分類あるみたいですね。知らなかった。
まず、一つの分類として、買い手は何人の売り手と取引するか

  1. 一人一社からしか買わない Exclusive Agency
  2. 一人複数社から買う Common Agency

さらに、財の個数や品質に対する評価が全員同じで程度が違う(財が二つあったとき、どっちの財が欲しいかで全員の意見が一致する)のか、そもそも好みの方向が人によって違う(二つ財があったとき、Aの方が好ましい人もいれば、Bの方が好ましい人もいる)のかという違いがある。  u^j(q,\theta) をタイプθの人が企業jの品質(or個数)qの財を買ったときの効用とすると、

  1. Vertical Heterogeneity :  u^j(q,\theta) is increasing in θ for each j
  2. Horizontal Heterogeneity:  u^j(q,\theta) is monotonic in θ for each j, but the direction varies across firms

って分類があります。

ただ、セッティングによって色々結果がありすぎて、いまいち全容がつかめないです。全部の特徴を全部含んだようなモデルがあればいいんだけど、普通に理論的にも難しくてよくわからないみたいです。いわんや実証の僕に分かるわけがない。

”普通の”第二種価格差別では、一般に品質が下方に歪みが生じるっぽいです。正確には、社会的に効率的な水準より供給される品質が低くなってしまう。タイプθの人が買う品質をqとすると、  \frac{\partial u^j(q,\theta)}{\partial q} とqを上げるマージナルコストが等しければ社会的に望ましいわけだが、前者の方が大きくなってしまう。これは、タイプθの人が自己選択するためのインセンティブ条件を満たしながら、供給者が利益を最大化しようすることでおこる。タイプが低い人には微妙に品質が悪い財を供給することでタイプが高い人が自分でいい品質で高い商品を選ぶように誘導することが利益最大化にとっては望ましく、結果Downward Distortion in quality allocationが起こってしまう。

普通は、財の配分が非効率になるようなことはないのだが、前の日記 http://d.hatena.ne.jp/econometrica/20130205 に書いたDana(1998,JPE)では、第二種価格差別でもAllocationでのInefficiencyが生じることを示している。

もっとまとめようと思ったけど、色々ありすぎて全然まとめることができる気がしないので、もうやめます。