Second Degree Price Discrimination

なんとなく、価格差別の実証の論文でもまとめてみようと思います。

まず、

A guide to the pitfalls of identifying price discrimination. Lott and Roberts (1991)

経済学者は、”同じもの”に見える財に異なる価格がついていると、「価格差別だ!独占力を行使している!」って思いたがるけど、実際にそうだと断定するのは難しい。
この論文では、ガソリン小売、レストランのランチ/ディナー価格差、映画館の高いポップコーンを例に、「みんながSecond Degree Price Discriminationとして説明したい現象っていうのは、単にUnobservedなCostにドライブされてるだけですよ。適当なモデルを書いて適当に実証するやつは死ね!」っていうメッセージを発信している。

Package size and price discrimination in the paper towel market. Cohen(2008)

この論文では、ペーパータオルの価格付けがNon-linearな点に注目して、差別化された財が寡占状況で取引される市場の第二種価格差別について色々調べている。5個入り100円だけど、10個入り150円みたいになってるけど、一個ずつバラで売らなきゃダメだってしたら、社会厚生はどうなるのか?とか、そういう反実仮想ができたら嬉しいわけです。

基本的にはBLPの手法を用い(ベルトラン均衡を仮定す)ることで、各財の限界費用が推定できる。そこから、価格差別がCost Drivenなのか、Strategic Pricing Drivenなのかもわかるし、Lott and Roberts (1991)の論文の批判にも耐えているっていう主張になってる。実際、推定値を見ると、後者になっているし、第二種価格差別の構造推定のいい論文だろ!って感じの主張です。色々反実仮想もしてます。
マーケットレベルのデータだけを使っているので、データの汎用性は高いところは好感が持てます。
反実仮想では、一個ずつしか売れないときと、パックの個数は自由だけどUnit Priceを一定にしないといけない状況を考えています。
どちらの場合も社会厚生は価格差別があったときの方が高く、消費者余剰も価格差別があったときの方が高いようです。

Estimating Demand for Local Telephone Service with Asymmetric Information and Optional Calling Plans. Miravete(2002)

電話の通話料のメニューってだいたい、最初にいくつかあるうちのプランから選んで、それに収まらなかったりすると別で追加の通話料がかかったりするっていう設定になってるじゃないですか。
消費者に”どれぐらい電話すると思うか”っていうタイプがあって、さらにメニューを選んだ後に”実際にどれぐらい電話するか”っていう不確実性が実現するようなモデルを考え、電話会社(独占)がどんなNon-linear Pricingをするかっていう問いに答えるペーパー。
小奇麗なモデルを書いて、上手いこと構造推定していて、カッコいいですね。
実際の各消費者の電話使用状況というマイクロデータを使っていて、「実際にどれぐらいの人がどういうプランを選んだか、さらにその選んだ人たちが実際にはいくら払ったか」まで見えるので、細かい複雑なモデルが推定できているようです。

Quality-Based Price Discrimination and Tax Incidence: Evidence from Gasoline and Diesel Cars. Verboven(2002)

わりとよく見るスクリーニングのモデルを実証した感じ。ディーゼルとガソリンっていう二つのタイプが”品質”の高低になっていて、独占企業がどれぐらいの距離乗るかっていうタイプをスクリーンしながらPrice Discriminateしてるぜっていう主張をしてます。
欧州各国の
売り上げ、(メーカー小売希望)価格,車やガソリン・ディーゼルへの税金,実際の運転距離の分布(ランダムサンプルからきてるっぽい)などのデータを使って、High Typeは距離あたりの燃料価格の安いディーゼル車をかって、Low Typeはガソリン車を買うようなスクリーニングモデルを書いて実証しています。
一応推定結果をみると、「独占企業が価格差別をしている」は棄却しないけど、「競争的な価格付けがなされている」は棄却されるみたいです。
実はちゃんと読んでいないので、どういうデータのバリエーションから上の結論を得ているのかよく分からなかったのですが、たぶん、「需要の価格弾力性は国ごとに違う。一方、同じ車であれば生産費用は同じ。」っていう仮定をつかっている気がするんですけど、Lott and Roberts (1991)の批判に答えているのかは謎ですね。

Price Discrimination and Retail Configuration. Shepard(1991)

ガゾリンの価格付けを使って寡占状況のスクリーニングのモデルを実証した論文。
コストDrivenじゃなくて、Willingness-to−Payでソートされてるぜってことも主張している。
まぁ、一応Lott and Roberts (1991)へのディフェンスもあるんだけど、Cost Drivenじゃないことを説得するには弱い気もする。というか、Lott and Roberts (1991)がこれを念頭に書かれているのではないかと思うほどだ。

Competition and Price Discrimination in Yellow Pages Advertising. Busse and Rysman(2005)

イエローページ(日本でいうタウンページ?)の広告費のNon-linear Pricingについての誘導形の論文。
競争が促進されると価格が下がるっていうのは一般的に成立することな気がするけど、価格メニューがあるとその影響って一様じゃなさそうだよね。実際どうなの?ってのがQuestionです。
結果としては、競争が激しくなるほど、大口の広告の価格が下がるみたいです。

Inference on vertical contracts between manufacturers and retailers allowing for nonlinear pricing and resale price maintenance. Bonnet and Dubois(2010)

Upstreamの会社とDownstreamの会社があって、製造→流通→消費までを含んだモデルを、家計レベルのデータを使って実証した論文。読んでて実は家計レベルのデータである必要はないように感じたので、実はマーケットレベルか、Retailレベルのデータでもいい気がする。
フランスのミネラルウォーターに関して、

  • 製造会社も流通会社も普通のLinear Pricingをしている(Double Marginalization)
  • 製造会社はTwo Part Tariffを使って卸値を決めている
  • 製造会社はTwo Part Tariffを使って卸値を決めているし、流通会社の売値にも影響力を持っている

っていうモデルのどれがもっともらしいかを、お決まりの「需要をBLP+流通部分はベルトラン競争」からテストしている。
構造推定の論文なので、製造側が合併したらどうなるかとか、Retail Priceを規制するような法律があったりなかったりしたらどうかっていう厚生への帰結も調べている。

Vertical Relationships between Manufacturers and Retailers: Inference with Limited Data. Villas-Boas(2007) & Identification of supply models of retailer and manufacturer oligopoly pricing. Villas-Boas and Hellerstein(2007)

一応、最近の一連の推定に使われるモデルの最初っぽいペーパーをまとめておきます。
マーケットレベルのデータしかないなかから、いかにどういうモデルが尤もらしいかというのをテストする方法・条件を明らかにしたペーパーです。
基本的には

  • 需要関数が独立に推定できるようなExclusion Restrictionがある
  • 生産者が色々物を作っていたとしても、製造コストはプロダクトごとにAdditively Separableである

っていう条件が重要になってきます。
2007年の論文では、アメリカのヨーグルト市場のマーケットレベルデータをつかって、ManufacturerとRetailerの間の取引の価格付けがどんなモデルが尤もらしいかをテストしている。具体的には

  • Uniform Priceがある。
  • Two Part Tariffになってる
  • Manufacturerが談合している
  • Retailer が談合している
  • Single Monopolistが市場全体の価格を決めている

というモデルを考えている。
Two Part Tariffも、Manufacturerが限界価格は限界費用にして固定費として利益を吸い上げる場合と、Retailerが限界費用でPricingするけどフランチャイズ費とかで利益を吸い上げる場合が考えられている。
推定結果を見ると、Double Marginalizationは棄却されて、生産者がMCでPricingしてるモデルがもっともらしいようです。

Vertical Contracts in the Video Rental Industry. MORTIMER(2008)

他のペーパーと違って、UpstreamとDownstreamの契約が実際に見えているようなデータを使って、Single Priceで卸すか、なにかしらのRevenue Sharingな契約で卸すかでの社会厚生の違いを構造推定で明らかにしている。
(おいおいちゃんと追加する予定)

他にも随時更新して行こうと思います。