公共入札メモ2

http://www.asahi.com/national/update/0430/TKY201004300526.html

財務省所管の独立行政法人(独法)の国立印刷局から今年度の国会議事録の印刷事業を企画競争で受注した印刷会社7社が、事前に連絡を取り合い、価格調整をしていた疑いがあることが分かった。7社の担当者がやり取りしたとみられるメールの記録を朝日新聞が入手した。7社側は上限の99%以上の金額を提示しており、印刷局は「事実であれば看過できない」として調査に乗り出す方針を決めた。

 印刷局が発注したのは、国会の本会議や委員会の速記録をもとに議事録を印刷する事業で、2010年度の予算額は1億7千万円(約71万部、約700万枚)。印刷局は昨年12月、一般競争入札を公告したが参加者がなかったため、翌1月、予算額を公表し、公募で見積額などを記した企画書を提出させる企画競争を公告した。

 朝日新聞が入手したメールの記録によると、7社の担当者は、社用の電子メールアドレスを使って互いに送受信を繰り返していた。応募前の2月18日、7社のうちA社とB社がそれぞれ、1枚あたりの単価を見積もって各社に示した。各社の意見がA社案とB社案に分かれたため、23日、B社が「そろそろ時間もないので、A社の案でいきたいと思います」という内容のメールを各社に送り、他社にはA社より少し高い見積額を出すよう呼びかけた。

 その後、7社はそれぞれ企画書を印刷局に提出。7社以外に応募はなく、最も低かったA社の見積額は予算額の99.95%にあたる1億6992万円で、印刷局はこれを契約額とし、応募した7社に示した。7社ともA社の見積額で請け負うことができると回答し、印刷局は25日、事業を7等分して7社とそれぞれ契約を結んだ。7社すべてと契約したことについて印刷局は「議事録を短い納期で大量に印刷する必要があり、なるべく多くの業者に委託したかった」と説明する。印刷局によると、今回の印刷事業は07年度まで随意契約で、独法の整理合理化計画などを受けて08、09年度は企画競争に変更したが、いずれも随契時と同じ7社が受注を続けているという。

朝日新聞の取材に対し、7社のうち1社の社長はメールでのやり取りを認めた上で、「いつも顔を合わせる業者同士の雑談みたいなものだが、価格調整と誤解されかねないので今後はやらない」と話した。別の社の関係者は「受注量が減少する厳しい状況の中、印刷業者にとって議事録は何としても取りたい仕事だ。印刷局も、気心の知れた業者に頼みたい事情があったのではないか」と説明した。

 7社は東京都や長野、群馬、石川の各県にそれぞれ本社を置き、08年決算期の売上高は2億〜20億円。官公庁や印刷局などからの受注が多く、印刷局からの売上高がかつて全体の7割を占めていた会社や、印刷局OBが役員の会社もある。(奥田薫子、中村信義)

■メールでのやりとり(一部表現を変更)

【2月18日】

A社「どこが最低ラインを出しますか? (1枚あたりの単価を)23.1円にしてみました」

B社「案を作成してみました。総額にあわすようにして単価を上げていきました」

C社「A社の案で異論はありません」

D社「私のところはB社の単価と同額です。予算総額からしてこれしか算出のしようがないと思います」

【同19日】

B社「案が2通りでました。どちらかに賛同していただくか、また他によい案がある方はご連絡を」

【同23日】

B社「そろそろ時間もないので、A社の案でいきたいと思いますがいかがでしょう? A社より多少高くして見積もりを提出していただければ良いと思います」