Bounding Best-Response Violations in Discriminatory Auctions with Private Values

Bounding Best-Response Violations in Discriminatory Auctions with Private Values
JTE Chapman, D McAdams, HJ Paarsch - Typescript. Iowa City, 2006

論文の要点は、

  • Independent Private Value
  • Discriminatory Auction(Pay-as-bid)
  • Multiunit Auction(複数財オークション?)

というセッティングで、

  • Non-increasing Marginal Value

という仮定のもとで

  • プレイヤーはBest Responseをプレイしているのか?

という仮説を検証している。

複数財(分割可能財)で、入札者が自分のDemand Scheduleを入札するようなオークションは、セッティングをシンプルにしても均衡を計算するのは難しい。そこで、もっとゆるい条件をつかって色々推定できたら均衡が複雑なことを無視して考えられて嬉しい。

まず、Non-increasing Marginal Valueという仮定をおく。これは
「追加的に得られる財の価値はNon-increasing」というもので、まぁ、妥当かと思う。限界効用が逓減する的な感じ。複数財なので、1個目の価値と2個目の価値を比べたら後者は前者より大きくないっていうこと。
何の仮定もなしには、観察されるどんな入札にもそれをRationalizeするような価値の分布が存在してしまって、何も言えないらしい。それを避けるために何かしらの仮定をおく必要があるのだが、この論文では上記のような仮定をおいているという訳だ。


基本的なストラテジーは、

Best-Responseの仮定の下では、

  1. みんながBest Responseをプレイしている
  2. ということはベイジアンナッシュ均衡が実現している
  3. 現在の戦略からのどんな逸脱も得にならない

というロジックが成立する。

そのロジックから、理論的に、Best-Responseであれば成り立っていないといけないような性質を求める。
そして実際に観察される入札から、
「各プレイヤーが微妙に各自の入札から逸脱したときに何が起こるか」
ということを計算して、そこから価値の分布のBoundを求めたり、理論的に求めた性質が実際に満たされているかをチェックしたりする。

というもの。まぁ、直感的だしわりと普通のアイディアだと思う。Pakes Porter Ho Ishiiの論文のアイディアとも同じだし、何が新しいのかはよくわからなかったけど、Best-ResponseのTestableなインプリケーションを導出できている部分と、複雑なオークションのセッティングでもわりと簡単な推定方法を提示しているところがいいのだと思う。


データとして、カナダの中央銀行が短期に現金を供給している市場のデータを使っている。
推定結果として、60%ぐらいのプレイヤーはBest Responseから逸脱しているがその逸脱具合は非常に小さいということがいえている。