メモ

http://www.asahi.com/kansai/news/OSK201003100055.html

公共工事の入札で「最低制限価格」を事前公表している自治体で、不況による過当競争のため複数の業者が下限価格で並び、くじ引きで落札業者が選ばれる事態が急増した。工事の質の低下や下請けへのしわ寄せが懸念されるとの指摘もあり、国土交通省は事後公表への転換を各自治体に要請。大阪府でも2009年度の対象となる入札のくじ引き率が85%に達し、一部を試験的に事後公表に切り替えた。(永井啓吾)

 大阪府で今月5日にあった浄水場電気設備設置工事の一般競争入札では、参加31社のうち27社が最低制限価格5245万円で並んだ。1月にあった府営高層住宅新築の電気設備の入札でも、83社中71社が同6453万円で並び、どちらもくじ引きとなった。

 府の発注工事をめぐる贈収賄事件で府議や府幹部が相次いで逮捕されたことを受け、府は透明性確保のため、一定の額の土木・建築工事を対象に、01年に最低制限価格の事前公表を始めた。

 複数の業者が最低制限価格で並び、くじ引きで落札業者が決まった件数は、01年度は302件(全体の21%)だった。だが08年度は1076件(74%)、09年度は4〜12月だけで1083件(85%)にまで上がっている。

 くじ引き率の急上昇を受けて、府は昨年12月、一部の入札で試験的に事後公表に切り替えた。試行した42件中、くじ引きは12件(29%)と大幅に減った。府の担当者は「業者が独自の積算で低い金額を入札し、本来の競争原理が働いている」とみる。

 国土交通省によると、最低制限価格を事前公表しているのは、都道府県では大阪、奈良、福岡の3府県。政令指定都市では京都、福岡の2市。

 奈良県は08年6月に事前公表を始めた。くじ引き率は08年度が60%、09年4〜10月が75%だった。昨年、平城遷都1300年祭のメーン会場の整備工事を落札した6業者が、すべてくじ引きで決まるということも起きた。



直近のくじ引き率は、京都市で74%(08年度)、福岡市で33%(09年4〜8月)、福岡県で27%(同4〜9月)だった。いずれも現時点で事前公表を見直す動きはない。

 一方、指定市の中では、これまで事前公表してきた堺市千葉市が、09年4月から事後公表に転換した。

 堺市は03年に事前公表を導入したが、08年度は338件の対象工事のうち、331件までが最低制限価格でのくじ引きとなり、くじ引き率は98%に達した。これが09年4〜9月では152件のうち、くじ引きになったのは5件(3%)と激減している。

 国交省入札制度企画指導室の担当者は「事前に最低制限価格が分かると、きちんと見積もりをとっている業者も、いい加減な積算の業者も、くじ引きの運任せになってしまう。それでは入札の意味がない」と話している。

 大阪府の北川竹司・契約1課長は「4月からは、事後公表に転換する対象工事の範囲を拡大していく」と話す。入札をめぐる過去の事件も踏まえ、最低制限価格を事前に聞き出そうとする不当な要求には厳正に対処することや、入札情報の管理の徹底なども並行して進めるという。