A study of collusion in first-price auctions
M Pesendorfer - Review of Economic Studies, 2000

学校への牛乳納入はオークションで納入業者と価格が決められているが、アメリカの公正取引委員会(?)がいっぱい談合見つけて罰しまくったので、いろんな州でその法廷での結果をもとにしたオークションの談合に関する論文が書かれた。
Ohio school milk markets: an analysis of bidding
RH Porter, JD Zona - The RAND Journal of Economics, 1999
などもその例。

理論

Public Procurementの独立価値オークションで、リザーブプライスとしてR,コストが[0,C]をサポートとする分布に従っているとする。
1.談合間での金銭収受が可能な場合。
談合参加企業で、効率的な形で契約の配分ができる
2.金銭収受が不可能な場合
効率的ではない。ただ、ランクメカニズムというメカニズムでAlmost Efficientな配分が可能。
Ranking Mechanismとは、各参加者が各契約に順位をつけ、各契約ごとにもっとも高い順位をつけた人にその契約を割り振るというもの。

理論のImplicationとして、
1.Side Payment(金銭収受)が可能な場合の方が、談合参加企業間のマーケットシェアの分散が大きい。
2.Ex anteに全ての企業が同じであれば、談合に参加していない企業の方がアグレッシブにBidするし、不参加企業のEx anteな入札の分布は参加企業のEx anteな入札の分布をStochastically Dominateする。

実証パートでは以上のImplicationをテストしている。
ただ、カルテルのEnforcementなどについては何も書いていない。
また、Ex anteに企業がAssymetryだった場合、2.のテストはあまり意味がない。ここではSymmetryを仮定している。

実証

ざっくりと言葉で、このケースでは談合がおきやすいっていうことと、プライベートバリューな設定がもっともらしいっていうことを説明している。

フロリダとテキサスのデータを使用している。フロリダでは金銭収受が(法廷で)明らかになり、テキサスでは金銭収受があったとは認められなかった。

まず、各談合参加企業のシェアを談合ダミーで回帰して、その誤差項の分散の大きさを両州で比べている。
つまり、各州ごとに
 \ln \left( \frac{S_{it}}{1-S_{it}} \right) = D_i \beta +\epsilon _{it}
という回帰分析をOLSでして、誤差項の分散の大きさが違うという検定をF検定を使ってしている。理論から導かれるように、フロリダの方が分散が大きいことが言えている。
他にもこの結果が導かれるもっともらしい理由を挙げては、ことごとくテストして、分散の差が金銭収受が可能か不可能化の差から来ているという主張を確かめている。この辺きっちりしていて好感が持てる実証の姿勢だと思う。

つぎに実際の入札行動の分析をしている。
カルテルが実際にカルテル内で入札者を選んでいるとしたら、上で述べたようなインプリケーションがあるはずで、それをテストする。
各案件ごとには、カルテル内の最低入札とカルテル外の入札しか情報として価値を持たない。なぜなら、カルテル内の他の入札はなんでもよいので、選好を顕示しないから。

そこで、カルテル外の入札額と、カルテル内の最低入札額を案件と企業の特徴、特性に回帰する。
 \ln b_{ij} ^c=X_{ij}\beta ^c +\epsilon^c _{ij}
 \ln b_{ij} ^n=X_{ij}\beta ^c +\epsilon^n _{ij}
上付きの添え字がカルテル内かカルテル外を示している。
帰無仮説として  \beta ^c=\beta ^n  をテストすることで、カルテル外の方がよりアグレッシブに入札するという理論のインプリケーションをテストする。実際、帰無仮説は棄却される。

次にStochastic Dominanceのテストだが、帰無仮説として分布が同一と仮定し、全てのサンプルを使って上と同じような回帰をする。
次に、カルテル内の企業の残差と、カルテル外の企業の残差を抽出し、ランクテストを行う。
これによって、二つ目のインプリケーションもテストされ、ここでも帰無仮説は棄却される。

感想

AuctionにおけるCollusionをみつけるというより、見つかったという前提で理論のインプリケーションをテストしている。
基本的にはPorter and Zonna(1997)と同じ方法。あまりストラクチャルではないなと思った。ひょっとしてAuctionのCollusionってストラクチャルにはしにくいのかな?逆にストラクチャルに推定できたらすごいのかもしれないと思った。